アトピーは「掻く癖」になる?僕の経験と研究を比べてみた
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アトピーは、かゆいから掻く。
僕はずっと、かなり単純にそう思っていました。
というのも、僕自身が昔アトピーで、症状がひどかった頃は本当にいろいろな場所を掻きむしっていたからです。
その時のことは、今でもはっきり覚えています。
「掻くことが心理的な癖になる」と言われると、僕自身にはあまり当てはまりません。
今はアトピーの症状はなく、当時あれだけ掻いていたのに、掻くという行為が癖として残っている感覚もありません。
かゆくなければ、僕は掻きません。
だから今回、「かゆみとは別に、掻く行動そのものが習慣になる場合がある」という話を目にした時、正直最初は
「本当にそうなのかな?」
と思いました。
でも調べてみると、これは「アトピーは心理的な癖で起きる」という話ではありませんでした。
むしろ、アトピーのかゆみには皮膚や炎症、神経の問題があり、その上に“掻くという行動の習慣”が重なる人もいる、という話です。
これなら、僕自身の経験とは違っていても、「そういう人もいるのか」とかなり興味深く読めました。
アトピーのかゆみは、まず「皮膚の問題」です
ここは最初にはっきり分けておいた方がいいと思います。
アトピー性皮膚炎のかゆみを、単純に心理的な問題や癖で説明することはできません。
アトピーでは、皮膚のバリア機能、炎症、免疫、そしてかゆみを伝える神経などが複雑に関わっています。
皮膚の状態が悪くなってかゆみが出る。
かゆいから掻く。
掻くことで皮膚がさらに傷つき、また炎症や乾燥が起こりやすくなり、次のかゆみにつながる。
これは「かゆみ―掻破サイクル」と呼ばれるもので、アトピーのかゆみを考えるうえでは以前から知られている悪循環です。
なので、掻いてしまう人に対して「意思が弱い」「我慢できないだけ」と考えるのは違います。
かゆみがあるから掻く。
まず、そこがあります。
ただ、日本では「かゆくないのに掻く」人もかなりいました
今回、僕が特に面白いと思ったのがここです。
2025年に発表された日本の研究では、アトピー性皮膚炎の成人1,507人と子ども525人を対象に、「掻く行動」について質問しています。
※日本全国のアプリを使った自己申告の横断調査です。
44.5%という数字は、僕が思っていたよりかなり多かったです。
しかも、症状が重いグループほど、このような回答をする人の割合が高くなっていました。
ただし、ここは数字だけを見て話を大きくしない方がいいです。
「アトピー患者の44.5%は掻くことが癖になっている」と断定できる研究ではありません。
質問は自己申告で、研究者自身も、掻く行動を調べる質問項目が正式に検証された尺度ではないことを限界として挙げています。
また、痛み、ヒリヒリ、チクチクなど、本人が「かゆみ」とは認識していない別の感覚で掻いていた可能性もあります。
さらに、この研究では「こういう掻き方をする人ほど症状が重い」という関連は見えていますが、
掻く癖があるからアトピーが重くなったのか。
アトピーが重いから掻く行動も増えたのか。
そこまでは分かりません。
なお、この研究は大塚製薬が資金提供し、研究デザイン、データ収集、解析、結果の解釈、論文執筆にも関与しています。
だから研究結果が間違いという話ではありません。
ただ僕は、研究を見る時には、数字だけではなく「どんな研究だったのか」まで見るようにしています。

どうして「掻くこと」が繰り返されやすいのか
ここも、調べてみると面白いところでした。
掻くと、その瞬間は本当に少しかゆみが弱くなります。
皮膚を掻くことで別の強い感覚が入り、かゆみの信号が一時的に抑えられる仕組みが知られています。
だから、かゆい時に掻いて「ちょっと楽になった」と感じるのは、気のせいではありません。
さらに、健康な成人16人を調べた脳画像の研究では、かゆい場所を掻いて心地よさを感じた時に、脳の「報酬」に関わる領域が活動していました。
難しく言う必要はなくて、僕はこう理解しました。
かゆい → 掻く → 一瞬ラクになる。
この「一瞬ラクになる」があるから、同じ行動を繰り返しやすくなる場合がある。
2026年8月18日にDermatology Timesで紹介された専門家の話も、この考え方です。
「きっかけがある → 行動する → その結果を得る」という習慣の仕組みを、掻く行動にも当てはめて考えています。
例えば、かゆみやストレスなどがきっかけになる。
掻く。
一瞬ラクになる。
すると、また似た場面で掻きやすくなることがある。
ただし、これも「アトピーのかゆみは全部習慣です」という意味ではありません。
皮膚に強い炎症とかゆみがあれば、当然掻きたくなります。
今回の話は、そこへさらに「行動としての掻く」が重なる人もいる、という話です。
でも、僕自身には「掻く癖」は残りませんでした
ここは研究とは別に、僕自身の経験です。
僕は昔、アトピーがひどかった頃は本当に掻いていました。
いろいろな場所を掻きむしっていたことも、かなり鮮明に覚えています。
でも今、アトピーの症状がなくなった後までその行動が残っているかと言えば、僕の場合は全く残っていません。
頭を無意識に掻くわけでもない。
腕や脚をなんとなく掻き続けることもない。
僕の感覚では、かゆかったから掻いていた。
かゆくなくなったら、掻かなくなった。
かなり単純です。
なので、もし「アトピーになると掻くことが心理的な癖になります」と言われたら、僕は自分の経験からは違うと言います。
でも、それで今回の研究が間違っているとも思いません。
実際、日本の調査では、かゆみがない時にも掻くと答えた人がかなりいました。
人によって違う。
僕は今回、そこが一番面白いと思いました。
母が頭を掻くのを見て、少しだけ腑に落ちた部分もありました
僕の母は、昔から頭を掻く癖があります。
僕から見ると「また頭を掻いているな」と感じることがあるので、今回の話を読んだ時に、
「こういう“掻くこと自体が習慣になっているケース”もあるんだな」
とは思いました。
もちろん、母が研究で言う「習慣的な掻破」に当てはまるかは分かりません。
頭皮が実際にかゆいのかもしれませんし、別の違和感があるのかもしれません。
ただ、自分には全く残らなかった「掻く」という行動が、別の人では繰り返されているのを身近で見ているので、今回の研究が急に少し現実味を持ったのも確かです。
「掻くのを我慢できない人」の話ではありません
僕がこの記事で一番避けたいのは、
「掻いてしまうのは意思が弱いから」
という受け取り方です。
これは違います。
アトピーでは、まず強いかゆみそのものがあります。
しかも掻けば、その瞬間は少しラクになる。
そのうえ、人によっては無意識の掻く行動まで重なる可能性がある。
だから「掻くな」と言うだけで簡単に解決する話ではありません。
強いかゆみや炎症、掻き壊し、ジュクジュクした傷、睡眠に影響するほどの症状がある場合は、掻く癖だけを何とかしようとせず、皮膚科で皮膚の状態とかゆみ自体をきちんと診てもらうことが大切です。
掻く行動への働きかけは、必要な治療の代わりではなく、治療と一緒に考えられているものです。
今回の話を見て、僕は
「なるほど、そういう人もいるのか」
と思う部分と、
「でも僕自身には当てはまらなかったな」
と思う部分の両方がありました。
研究って、全員を一つの説明に当てはめるために読むものではないと僕は思っています。
自分の経験と比べながら、当てはまるところと当てはまらないところを見る。
それでも今まで知らなかった見方が一つ増える。
今回の「かゆみ」と「掻く行動」を少し分けて考える話は、僕にとってまさにそんな内容でした。
・Dermatology Times(2026年8月18日)“Skin & Psych: Using Habit Loop Science to Interrupt the Itch-Scratch Cycle”
https://www.dermatologytimes.com/view/skin-psych-using-habit-loop-science-to-interrupt-the-itch-scratch-cycle
・Nakahara T, et al. Dermatology and Therapy. 2025. “Habitual Scratching in Atopic Dermatitis and Its Association with Disease Severity”
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40841864/
・Mochizuki H, et al. Journal of Neurophysiology. 2014. “The cerebral representation of scratching-induced pleasantness”
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24155004/
・Kamata Y, et al. Juntendo Medical Journal. 2025. “Mechanisms of Itch in Atopic Dermatitis”
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40109398/