抜け毛はどこまで正常?RNA研究から知る髪の仕組み
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お風呂の排水口や、ブラシに残った髪。
「こんなに抜けて、大丈夫なのかな」と気になることはありませんか?
髪が抜けること自体は、異常ではありません。
髪には、生えて、伸びて、抜け替わる周期があります。大切なのは、抜け毛をゼロにすることではなく、自分の普段の状態と、気をつけたい変化を知ることです。
今回は、髪の生え変わりに関する新しい研究を入り口に、抜け毛をどう見ればいいのか、そして髪が生えてくる頭皮をどう考えるのか、お話しします。
髪の生え変わりに、RNAが関わっている
2026年9月22日、国際学術誌「PLOS Genetics」に、毛の形成と生え変わりを調べた研究が掲載されました。九州歯科大学も参加した国際共同研究です。
その中で注目されたのが、細胞の中にある「RNA」への小さな化学的な目印でした。
……と言われても、RNAって何?
となりますよね。
まずは、DNAとの違いから紐解いていきます。
RNAにはいくつか種類があります。この図の「作業用のコピー」は、その中のmRNA(メッセンジャーRNA)を説明したものです。
設計図があるだけでは、
髪はつくられません。
その情報を必要なときに使い、細胞が働き、髪をつくる仕組みが動いているんです。
今回分かったのは「コピーを安定させる仕組み」
研究では、「METTL1(メトルワン)」という酵素が、毛の形成に関わるmRNAに化学的な目印を付け、そのmRNAを安定させることが示されました。
この目印は「m⁷G」と呼ばれます。名前を覚える必要はありません。細胞の中では、情報のコピーがきちんと使われるように調節されている、と考えると分かりやすいと思います。
研究で観察されたこと
- マウスの特定の皮膚の細胞で、この酵素を働かなくすると、毛包の形成に異常が起き、毛の再生も遅れました。
- 反対に、酵素の発現を高めたマウスでは、毛包が成長期へ入る時期と毛の再生が早まりました。
情報の安定性だけでなく、毛をつくる細胞同士の結びつきにも関わっていました。
中心となるのはマウスと細胞を使った研究で、人の薄毛に対する治療効果を確かめた試験ではありません。
ただ、髪は思っている以上に、複雑な仕組みでつくられている。そのことがよく分かる研究です。
髪をつくる場所には、生え変わりの周期がある
髪は、頭皮の中にある「毛包(もうほう)」という小さな器官でつくられています。
その毛包は、ずっと同じ髪を伸ばし続けているわけではありません。成長し、休む準備をし、休み、また新しい髪をつくる。この繰り返しが「毛周期」です。
期間は目安です。抜ける過程と新しい髪の成長には重なりがあり、すべての髪が同じタイミングで進むわけではありません。
頭髪の約85〜90%は成長期にあるとされています。伸びている髪もあれば、休んでいる髪もある。だから、日々少しずつ抜け替わります。
抜けた髪があることと、髪が減り続けていることは、同じではないんです。
正常な抜け毛は、何本まで?
「1日50〜100本」という目安を見たことがある方もいると思います。
米国皮膚科学会はこの範囲を紹介し、日本皮膚科学会も、個人差や季節、ヘアケアの仕方によって変わるものの、おおよそ1日100本程度までと説明しています。
ただ、英国皮膚科学会の患者向け資料では、1日30〜150本という、もっと幅のある目安が示されています。
「100本以下なら大丈夫、101本なら異常」という境界線ではありません。
本数は目安。普段からの変化と、髪や頭皮の状態を一緒に見ることが大切です。
それに、排水口にある髪だけで、1日分の抜け毛を全部数えられるわけではありません。生活の中でも抜けていますし、髪が長ければ同じ本数でも多く見えます。
洗髪までの間隔が空くと、抜けて髪の間に残っていた毛が洗うときにまとまって出てきて、多く見えることもあります。前回いつ洗ったかが違う状態で、排水口の量だけを比べても、同じ条件の比較にはなりません。
自分の普段の量を知ることは役立ちますが、毎日一本残らず数える必要はありません。
抜け毛を気にするあまり、それ自体が毎日の負担になってしまう。僕が避けたいのは、そういう状態です。
強いストレスが抜け毛のきっかけになることはあります。でも、抜け毛を心配したら必ずもっと抜ける、という話ではありません。不安が続くなら、一人で数え続けるより、皮膚科で相談してください。
本数より、こんな変化を見てください
正常な抜け毛があるからといって、どんな変化も放っておいていいわけではありません。
皮膚科へ相談したい変化
- いつもより明らかに多い抜け毛が続く。
- 分け目が広がる、頭頂部の地肌が以前より見える。
- 一部分だけ、円形やまだらに髪が抜ける。
- 急に大量に抜ける、髪の密度が目に見えて変わる。
- 赤み、強いかゆみ、痛み、じゅくじゅくした状態や、目立つフケを伴う。
急激な変化や炎症があるときは、何か月も様子を見る必要はありません。
40〜60代になると、髪のボリュームや分け目の変化を
「年齢のせい」「更年期だから」と片づけたくなることもあると思います。
でも、頭頂部を中心に薄くなる女性型脱毛症もあれば、身体の変化をきっかけに、一時的に抜け毛が増えることもあります。
見た目だけで原因を決めず、変化が続くときは確認する。そこまで含めて、自分の髪を大切にすることだと思います。
気になる分け目は、同じ分け方、同じ角度、同じ明るさで写真を残すと、後から比べやすくなります。毎日細かく見比べるより、少し間隔を置いて、受診時にも見せられる記録にしてください。
抜け毛が増えたら、少し前の生活も振り返る
抜け毛のきっかけは、今日の出来事だけとは限りません。
発熱を伴う病気、手術、出産、大きなストレス、急激な減量などの2〜3か月ほど後に、抜け毛が増える「休止期脱毛」が起きることがあります。
最近、食事を極端に減らしていなかったか。大きく体調を崩していなかったか。薬を始めたり、変えたりしていなかったか。こうしたことも、診察で伝える情報になります。
必要に応じて、鉄不足や甲状腺の病気などを調べる場合もあります。抜け毛だけを理由に鉄のサプリを飲み始めたり、薬を自己判断でやめたりせず、まず原因を確認してください。
僕が髪を洗わず、頭皮を観察したときのこと
僕自身は、抜け毛を気にしてきたわけではありません。
ただ、シャンプーとトリートメントを開発する過程で、髪を洗うのを2日、3日やめたり、その後また洗ったりして、
自分の頭皮を頭皮スコープで観察していた時期があります。
・下記の画像は毎日「洗浄~保湿」までケアしていた頭皮画像
①

②

・2-3日、そのままにしていた時の頭皮画像
①

②

そのとき、僕の経験では、洗っていないときの方が抜け毛は増えました。
頭皮スコープで見ると、髪が少し脂ぎっている様子も明らかに見えました。
頭皮にはフケのような汚れが目立ち、毛穴の周りにも皮脂がたまってきていました。
ちゃんとシャンプーをしているときとは、見えている状態が全く違ったんです。
これを見て、洗わないことが、自分の頭皮にとっていいケアだとは思えませんでした。
ただ、スコープで皮脂が見えたことだけで、抜け毛の原因まで分かるわけではありません。僕が実際に見た頭皮の状態と抜け毛の変化、そこは分けて考えています。
「抜けるのが怖いから、洗わない」ではなく、頭皮の状態に合った洗い方を。
乾燥しすぎず、油っぽさもため込まない。必要な洗浄をしながら、爪を立てたり、強くこすったりしないことが基本です。
十何年も髪をケアして、残っていた悩み
僕が長く悩んでいたのは、フケ、かゆみ、嫌なニオイでした。
髪のケアはずっとしていました。
商品も替えてきました。それでも、十何年も、その悩みが残っていたんです。
そこで、商品を替えるだけではなく、そもそもケアする対象を変えなきゃいけないんじゃないか、と考えるようになりました。
髪が生えてくる土台は、頭皮です。髪を毎日ケアするなら、頭皮も毎日ケアの対象にする。中心に考えるべきなのは、頭皮なんじゃないか。
そこが、僕のケアの考え方が変わったところでした。
髪の手触りは見ていても、髪がつくられる場所まで見ているでしょうか。
毎日触れる頭皮を清潔に保ち、乾燥や刺激に配慮することと、細胞の中の仕組みや脱毛症を治療することは、役割が違います。頭皮を保湿すれば、すべての抜け毛が解決するわけではありません。
だからこそ、治療が必要な変化は医療へつなぎながら、毎日のケアでは頭皮を置き去りにしない。この両方が大切です。
ヘアケアだけでなく、スカルプケアも毎日に
顔は洗った後に保湿する。頭皮も、同じ皮膚です。
頭皮を洗うだけで終わらせず、保湿まで毎日の習慣として考えてほしい。髪だけでなく頭皮を中心に考え、シャンプーとトリートメントの処方へ反映したものが、浸艶です。
シャンプーで優しく洗い、次の保湿ケアの土台を整える。頭皮にも使えるトリートメントで、髪と頭皮を保湿する。
洗うことと保湿することの役割を分けながら、商品や工程を増やさず、普段のお風呂の中で続ける。それが、浸艶の考えるケアの在り方です。
すでに頭皮をケアしている方も、一度使っているものと使い方を見てみてください。
・洗った後、つっぱったり、乾燥したりしていないか。
・保湿に使うものは、頭皮への使用を想定した商品か。
髪用のトリートメントを、何でも頭皮に塗っていいわけではありません。
・使うたびに、赤みやかゆみが出ていないか。
合わないと感じたら使用を中止し、症状が続く場合は皮膚科へ。
・量やすすぎ方は、その商品の案内に合っているか。
今ある髪をきれいにすることも大事です。
でも、その髪が生えてくる場所も、毎日、自分が触れている皮膚です。
髪の手触りを確かめるとき、頭皮がどう感じているかも、一緒に気にかけてみてください。
参考資料
- Gan X, et al.(2026)METTL1-mediated m⁷G modification regulates hair follicle cycle via the HOXC13/FOXN1/DSG4 axis. PLOS Genetics 22(9): e1012307. 論文を読む
- 九州歯科大学:RNAの化学修飾が毛の生え変わりを制御するしくみを解明(2026年9月29日)
- 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A・脱毛症」(Q1・Q8・Q17・Q18)
- American Academy of Dermatology:Do you have hair loss or hair shedding?
- British Association of Dermatologists:Telogen effluvium(2025年10月更新)